M&Aで会社を買いたい経営者は誰に相談すべき?税理士・銀行・M&A仲介会社・買い手FAの役割の違い

M&Aで会社を買いたい経営者が、税理士・銀行・M&A仲介会社・弁護士・買い手FAの相談先を比較するイメージ

こんにちは、M&Aアドバイザーの松金です。

会社を買いたいと考えたとき、「まず誰に相談すればよいのだろう」と迷う経営者は少なくありません。

普段から付き合いのある顧問税理士に相談するのか。取引銀行に話をするのか。M&A仲介会社へ問い合わせて案件を探してもらうのか。

M&Aについて調べていくと、さらに「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」という選択肢も出てきます。

実際の会社買収では、税理士、銀行・金融機関、弁護士、M&A仲介会社、買い手FAなど、複数の専門家や支援機関が関わることがあります。

それぞれに専門分野や立場があるため、「M&Aについて相談するなら、どこか一社に任せればよい」というものではありません。

大切なのは、「今、自社は何について相談したいのか」を整理したうえで、相談内容に合った相手を選ぶことです。

また、まだ具体的な買収案件がないのか、すでに候補企業を紹介されているのかによっても、必要な相談内容は変わります。

この記事では、会社を買いたい中小・中堅企業の経営者に向けて、税理士、銀行・金融機関、弁護士、M&A仲介会社、買い手FAの役割を整理します。

さらに、買収候補企業を探すソーシングの段階から、具体的な案件の検討、条件交渉の支援、デューデリジェンス、契約・クロージングまで、会社買収の各段階で誰に何を相談するのかについても解説します。

この記事でわかること

  • 税理士、銀行、弁護士、M&A仲介会社、買い手FAの役割の違い
  • 買収候補企業を探すときの主な相談先
  • 会社買収の段階ごとに、誰へ何を相談すればよいか
  • M&Aの相談先を選ぶときに確認したいポイント
  • 複数の専門家が関わる場合、誰が案件全体を整理するのか
  • 買い手FAを利用する意味が出やすい会社の状況
目次

会社買収では「何を相談したいか」で相談先が変わる

会社買収には、候補企業の探索、事業や財務の評価、資金調達、税務、法務、価格・条件の検討など、さまざまな論点があります。

例えば、買収候補となる企業を探すことと、対象会社の決算書を確認することでは、必要な支援が異なります。買収資金を調達できるかという問題と、対象会社の事業をどう評価するかという問題も別です。

まずは、相談内容と主な相談先を整理してみます。

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相談したいこと 主な相談先
買収目的や買収方針を整理したい 買い手FA、M&A支援会社など
買収候補となる企業を探したい 買い手FA、M&A仲介会社、金融機関、M&Aプラットフォームなど
税務・税負担について確認したい 税理士
決算書を見て財務面の論点を初期確認したい 税理士・公認会計士など
買収資金を調達したい 銀行・金融機関
契約や法的リスクを確認したい 弁護士
売り手との連絡・調整を進めたい M&A仲介会社、買い手FAなど
紹介された案件を買い手側で検討したい 買い手FA
買収価格や取引条件を買い手側で整理したい 買い手FA
財務・税務・法務などのデューデリジェンスを行いたい 公認会計士・税理士・弁護士など

ただし、実務ではこのように完全に役割が分かれているわけではありません。

税理士がM&A支援まで行っていることもありますし、金融機関がM&A案件を紹介することもあります。M&A仲介会社が買い手企業の希望条件を聞いて案件を探すこともあれば、買い手FAが買収候補企業の探索から支援することもあります。

そのため、肩書きだけを見るのではなく、「今回の会社買収で、その人・会社がどの立場で、どこまで対応するのか」を確認することが重要です。

会社買収の段階によって必要な相談相手は変わる

M&Aでは、検討の進み具合によって相談内容も変わります。

例えば、これから買収候補企業を探そうとしている段階と、すでにM&A仲介会社から企業概要書が届き、希望譲渡価格も提示されている段階では、必要な支援は大きく異なります。

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買収検討の段階 主な相談内容 相談先の例
会社買収を考え始めた 買収目的、予算、対象業種、買収方針の整理 買い手FA、金融機関、M&A支援会社など
買収候補を探したい 候補企業の整理、案件探索、候補企業へのアプローチ 買い手FA、M&A仲介会社、金融機関、M&Aプラットフォームなど
具体的な案件を紹介された 案件評価、追加確認事項、価格の初期検討 買い手FA、税理士・会計士など
トップ面談・意向表明 質問事項、価格、条件、スキームの検討 買い手FA、M&A仲介会社、税理士、弁護士など
デューデリジェンス 財務・税務・法務などのリスク確認 公認会計士、税理士、弁護士など
最終条件の調整・契約 価格、契約条件、クロージング条件など 買い手FA、弁護士、税理士など

会社買収を考え始めた段階では、いきなり目の前の案件を見るのではなく、まず「どのような会社を、何のために買うのか」を整理することが重要です。

買収目的が曖昧なまま案件を探し始めると、紹介される会社ごとに判断基準が変わりやすくなります。

一方、すでに具体的な案件があるのであれば、その会社を買う理由、利益の継続性、経営者への依存、希望譲渡価格など、対象会社固有の論点を確認していきます。

顧問税理士に相談する場合

会社買収を考えたとき、最初に顧問税理士へ相談する経営者は多いと思います。

普段から自社の決算や税務申告を依頼しているため、自社の財務状況を理解していることが大きなメリットです。買収を検討する際にも、自社にどの程度の財務余力があるのか、買収によってどのような税務上の論点が生じるのかを相談できます。

また、対象会社の決算書を見てもらい、財務面の論点について意見を聞けることもあります。M&Aのスキームによっては、株式譲渡だけでなく、事業譲渡や会社分割などを検討することもあり、その場合には税務面の確認が重要になります。

一方で、通常の顧問税務の範囲で、買収方針の策定、候補企業の探索、対象会社の事業評価、トップ面談への同席、買収価格の検討、条件交渉の支援、M&A全体の進行管理まで対応することは一般的ではありません。

もちろん、M&A支援を専門的に行っている税理士事務所や、通常の顧問業務とは別にM&Aアドバイザリー業務を提供している税理士もいます。

そのため、顧問税理士へ相談する場合は、「税務面の相談が中心なのか、それともM&A実務まで支援してもらえるのか」を確認しておくとよいでしょう。

顧問税理士に相談することは有効ですが、税務の相談相手と、買収案件全体を進める相談相手は必ずしも同じではありません。

銀行・金融機関に相談する場合

銀行や信用金庫などの金融機関も、会社買収では重要な相談先です。

特に重要なのが、買収資金の調達です。対象会社の規模や買収価格によっては、自己資金だけではなく、金融機関からの借入を組み合わせて取得することになります。

そのため、ある程度の買収金額が見えてきた段階では、金融機関へ資金調達の可能性や借入条件を相談します。

また、金融機関によっては、取引先ネットワークやM&A支援部門を通じて買収案件を紹介しています。自社の事業内容や財務状況を理解している金融機関であれば、買収案件と資金調達を並行して相談しやすいこともあります。

一方、買い手企業としては、金融機関からどの程度の資金を調達できるかだけでなく、買収後の返済負担や追加投資まで含めて資金計画を考える必要があります。

例えば、融資を受けられる金額の範囲内であっても、買収後に設備投資や採用費用が必要であれば、その分の資金も残しておかなければなりません。

買収価格だけで資金調達を考えず、買収後に必要となる資金まで含めて検討することが重要です。

弁護士に相談する場合

M&Aの検討が具体化すると、弁護士の関与も重要になります。

M&Aでは、秘密保持契約、基本合意書、株式譲渡契約など、さまざまな契約書が関係します。また、法務デューデリジェンスでは、対象会社が締結している重要な契約、許認可、労務問題、訴訟、知的財産などを確認します。

こうした法的な論点について専門的に確認するのが、弁護士の重要な役割です。

法務デューデリジェンスで問題が見つかった場合、買い手側では、その結果を買収条件や買収後の事業へどう反映するかを検討します。

例えば、重要な取引先との契約に「会社の株主が変わる場合には取引先の同意が必要」といった内容があれば、その取引を買収後も継続できるのか、事前に同意を得る必要があるのか、取引が継続できなかった場合に売上へどの程度影響するのかまで確認する必要があります。

未払い残業代などの労務上の問題が見つかった場合も、問題の有無だけでなく、想定される負担額を確認し、買収価格や取引条件へどう反映するかを検討します。

弁護士に法的な論点を確認してもらい、その結果を買収価格、取引条件、買収後の事業へどのように反映するかを買い手側で整理していきます。

M&A仲介会社に相談する場合

M&A仲介会社は、会社買収を進めるうえで重要な役割を持っています。

特に大きいのが、売却を希望する企業と買収を希望する企業をつなぐことです。

中小企業の売却案件はすべて公開されているわけではありません。買い手企業が自社だけで売却希望企業を探すのは簡単ではないため、M&A仲介会社の案件ネットワークには大きな価値があります。

また、買い手企業から希望する業種、地域、企業規模などを聞き、それに合う案件を探して紹介する仲介会社もあります。

案件紹介後も、秘密保持契約、企業概要書の開示、売り手への追加質問、トップ面談の日程調整、条件のやり取り、契約、クロージングまで、売り手と買い手の間に立ってM&Aを進めます。

買い手企業にとって、仲介会社は売り手との重要な窓口です。

一方、仲介会社が「仲介者」として関与する場合には、その立場も理解しておく必要があります。

仲介会社は売り手・買い手双方の間に立ってM&Aを支援するため、買い手企業だけの立場から判断を支援する役割とは異なります。

だからといって、仲介会社からの情報や助言を利用してはいけないということではありません。

追加情報の取得、売り手への質問、トップ面談の設定、条件面の調整など、案件を進めるうえで仲介会社は重要な役割を担います。

そのうえで買い手企業側では、案件をさらに検討するのか、希望価格をどう評価するのか、どの条件までなら受け入れられるのかを整理していきます。

買い手FAに相談する場合

買い手FAは、買い手企業から依頼を受け、買い手側の立場でM&Aを支援します。

支援範囲は、買収方針の整理、買収候補企業の探索・ソーシング、具体的な案件の評価、買収価格・取引条件の検討や交渉支援、デューデリジェンスへの対応、契約締結に向けた条件整理・クロージングに向けた実務対応まで、買収プロセス全体にわたります。

まだ具体的な案件がない段階では、どのような会社を買収対象とするのかを整理し、候補企業を探すところから始めます。具体的な案件が出てきた後は、案件評価、価格・条件の検討、トップ面談、意向表明、デューデリジェンス、最終条件の調整へと進んでいきます。

まだ案件がない段階では、買収候補を探すところから支援する

具体的な案件がない場合には、まず買い手企業の買収方針を整理します。

例えば、なぜ会社を買いたいのか、どのような事業を取得したいのか、対象地域はどこか、どの程度の企業規模を想定するのか、買収後にどのような経営体制を考えているのか、といった点です。

こうした条件を整理したうえで、買収候補となる企業を探していきます。

候補企業の探し方は一つではありません。M&A仲介会社や金融機関から案件の紹介を受ける方法、M&Aプラットフォームを利用する方法、買収方針に合う企業を選定して個別にアプローチする方法などがあります。

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探し方 特徴
M&A仲介会社から紹介を受ける 仲介会社が保有・把握している案件や、買い手ニーズに合う案件の紹介を受ける
金融機関から紹介を受ける 取引先ネットワークなどを通じて候補案件が出てくることがある
M&Aプラットフォームを利用する 登録されている売却案件を検索・検討する
買い手FAと候補企業を探す 買収方針を整理したうえで候補企業を選定し、複数のルートから探索・アプローチする

一つの方法だけに絞る必要もありません。

例えば、仲介会社や金融機関から案件紹介を受けながら、並行して買い手FAと候補企業をリストアップし、買収方針に合う企業へアプローチすることもできます。

買い手FAのソーシングでは、買い手企業の買収目的や戦略を起点として、どのような企業を探すのかを整理することが一つの特徴です。

もちろん、M&A仲介会社でも買い手企業のニーズを聞きながら案件探索を行います。そのため、「仲介会社は案件を紹介するだけ、FAは戦略から探す」と単純に分けるものではありません。

重要なのは、相談先の名称よりも、自社の買収方針の整理から候補企業の探索まで、どこまで支援してもらえるのかを確認することです。

具体的な案件が出てきた後は、買い手側で検討を進める

具体的な会社が買収候補になれば、次は案件そのものを評価していきます。

例えば、仲介会社から企業概要書を受け取った場合には、なぜ自社がこの会社を買うのか、利益は買収後も継続しそうか、特定の顧客や経営者に依存していないか、追加で何を確認すべきか、希望譲渡価格をどう考えるか、といった点を整理します。

トップ面談へ進むのであれば、売り手経営者に何を確認するのかも検討します。

その後、意向表明書(LOI)を提出する段階では、希望価格、買収スキーム、経営者の引継ぎ、独占交渉など、提示する条件を整理します。

さらにデューデリジェンスで問題が見つかった場合には、その問題をどのように扱うかを検討します。

そのまま許容するのか、買収価格を見直すのか、売り手に対応を求めるのか、弁護士と連携して契約条件でリスクを抑えるのか、あるいは案件そのものを見送るのか。問題の内容と案件への影響を見ながら対応を整理していきます。

買い手FAは、こうした買収案件全体の検討を整理し、買収価格や取引条件の検討、条件交渉を買い手企業の立場から支援します。

仲介会社がいる場合、買い手FAは必要か

仲介会社から案件を紹介されている場合、「すでにM&Aの専門家がいるのだから、別に買い手FAを付ける必要はないのでは」と考える経営者もいると思います。

買い手FAは、すべての会社買収で必須というわけではありません。

社内にM&A経験の豊富な担当者がおり、対象会社の評価、買収価格・取引条件の検討、専門家との調整、交渉対応まで自社で進められるのであれば、外部FAを付けずに進めることもできます。

一方、社内にM&A経験者がおらず、経営者自身が通常業務と並行して買収を進める場合には、仲介会社を売り手との窓口として利用しながら、買い手側ではFAと案件を検討するという体制も考えられます。

この場合、仲介会社は売り手・買い手の間に立って案件を進め、買い手FAは買い手企業側で案件の検討を支援する、という役割分担になります。

また、案件探索の段階でも、仲介会社から案件紹介を受けながら、買い手FAと別の候補企業を探すといった組み合わせができます。

M&A仲介会社と買い手FAは、必ずしも二者択一ではありません。

それぞれがどの立場で、何を支援するのかを理解したうえで、自社に必要な体制を考えることが重要です。

相談先を選ぶときに確認したい5つのポイント

税理士、金融機関、M&A仲介会社、買い手FAなど、どこへ相談する場合でも、肩書きだけで判断するのではなく、実際の立場や支援内容を確認しておくことが重要です。

1.誰の立場で支援するのか

まず確認したいのが、その相談先が誰の立場で関与するのかです。

買い手企業から依頼を受けて買い手側を支援するのか、売り手側を支援するのか、それとも仲介として売り手・買い手双方の間に立つのか。

立場が違えば、期待する役割も変わります。

同一案件で売り手・買い手双方と契約し、双方から報酬を受ける仲介なのか、買い手側のみと契約するFAなのかも確認しておきたい点です。

仲介の場合には、売り手・買い手双方が依頼者となるため、利益相反のおそれが生じます。そのため、相手方からどのような報酬を受けるのか、利益相反のおそれがある事項についてどのように説明・対応するのかを、契約前の重要事項説明などで確認しておくとよいでしょう。

2.どこまで対応するのか

同じ「M&A支援」という名称でも、対応範囲はさまざまです。

買収方針の整理から対応するのか。候補企業の探索・ソーシングまで行うのか。具体的な案件の評価、買収価格や取引条件の検討、トップ面談、条件交渉の支援、デューデリジェンスの専門家との調整、契約・クロージングまでどこまで関与するのか。

依頼する前に支援範囲を確認しておくことで、案件が進んだ後の役割分担も明確になります。

3.M&A実務の経験があるか

M&Aでは、税務・法務・財務などの専門知識に加えて、案件進行そのものの経験も重要になります。

例えば、候補企業へどの段階でアプローチするのか、トップ面談の前に何を確認するのか、意向表明書でどの条件を提示するのか、デューデリジェンスで問題が出たときに次の検討へどうつなげるのか、といった部分です。

相談する際には、会社買収の支援経験や、どのような規模・業種の案件を扱っているのかも確認しておくとよいでしょう。

4.他の専門家と連携できるか

M&Aを一人の専門家だけで完結させることは通常ありません。

案件が進めば、税理士、弁護士、公認会計士、金融機関など、複数の専門家が関与します。

そのため、自分の専門領域以外について適切な専門家と連携できるか、また専門家から出てきた指摘を案件全体の検討につなげられるかも確認したいポイントです。

5.費用体系が明確か

M&A支援では、相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬など、さまざまな報酬体系があります。

いつ、何に対して、どの程度の費用が発生するのかを確認しておくことが大切です。

単に「成功報酬○%」だけを見るのではなく、最低報酬の有無や、途中で案件を見送った場合に費用が発生するのか、発生する場合はどのような費用なのかも確認しておくとよいでしょう。

複数の専門家がいても「案件全体を誰が整理するか」は残る

会社買収が具体的に進んでいくと、関係する専門家は増えていきます。

買収資金については銀行・金融機関、税務については税理士、財務デューデリジェンスは公認会計士、法務デューデリジェンスや契約書の確認は弁護士、といった形です。

それぞれの専門家から、その分野について重要な意見や指摘が出てきます。

ただし、専門家から出てきた指摘を確認しただけでは、買収案件全体としての検討は終わりません。

例えば、財務デューデリジェンスの結果、対象会社の実質的な利益が当初想定していた水準より低いことが分かったとします。

この場合、「利益が低かった」という事実を確認するだけではなく、その利益水準を前提に希望譲渡価格をどう考えるのか、買収後の借入返済に無理はないのか、必要な追加投資まで含めて採算が合うのか、といった検討につなげます。

法務デューデリジェンスでも同様です。

重要な取引契約に問題が見つかった場合には、その法的な内容を弁護士に確認したうえで、買収後の売上や事業継続にどの程度影響するのかを整理します。

影響が大きければ、売り手に事前対応を求めるのか、買収価格や取引条件を見直すのか、弁護士と連携して契約条件でリスクを抑えるのか、といった対応を検討します。

つまり、各専門家から出てくるのは、それぞれの専門分野から見た重要な情報です。

買い手企業には、それらをつなぎ合わせて、「この案件全体として、どのように対応するのか」を整理する役割が残ります。

社内にM&A担当者や経営企画部門があれば、各専門家から出てきた情報をまとめ、経営陣へ報告しながら案件を進めることができます。

一方、専任のM&A担当者を置いていない中小・中堅企業では、この役割を経営者自身や管理部門の責任者が担うことになります。

本業を経営しながら、対象会社の資料を読み、専門家からの報告を確認し、売り手や仲介会社とのやり取りを行い、社内でも判断をまとめていくため、経営者の負担は小さくありません。

また、専門家から出てくる論点は、それぞれ独立しているわけではありません。

法務上は対応可能でも、必要な追加費用まで考えると投資採算が変わることがあります。財務上の問題が限定的でも、買収後の経営体制と組み合わせて考えると別の懸念が見えてくることもあります。

そのため、M&Aでは専門家ごとの意見を個別に確認するだけでなく、それぞれの検討結果を買収価格、取引条件、資金調達、買収後の経営まで含め、一つの案件として整理することが必要です。

買い手FAは、こうした場面で買い手企業側に立ち、各専門家と連携しながら論点を整理します。

弁護士の法務面の指摘、公認会計士の財務面の分析、税理士の税務面の検討、金融機関の資金調達条件などを踏まえ、それらが案件全体へどのように影響するのかを買い手企業と一緒に検討していきます。

そのうえで、判断に必要な情報が揃っているか、まだ確認すべきことは何か、価格や条件を見直す必要があるのかを整理し、次の検討につなげていきます。

買い手FA・企業買収支援について

弊社では、専任のM&A担当者を置いていない中小・中堅企業を中心に、買い手企業の立場から会社買収を支援しています。

まだ具体的な案件がない場合の買収方針や候補企業の整理から、すでに紹介されている案件の検討までご相談いただけます。

買い手FAの利用を検討しやすいケース

買い手FAはすべての会社買収で必要というわけではありませんが、次のような状況では外部の買い手側アドバイザーを利用する意味が出やすくなります。

会社を買いたいが、買収方針をまだ整理できていない
買収による成長を考えているものの、対象業種、地域、企業規模などの条件が明確になっていない。

買収候補企業を継続的に探したい
仲介会社から紹介される案件に加えて、自社の買収方針に沿った候補企業も探していきたい。

社内にM&A経験者がいない
経営者や管理部門が、通常業務と並行して初めての会社買収を進めている。

仲介会社から案件を紹介されたが、自社側で相談できる人がいない
企業概要書は届いているものの、何を確認し、どの段階まで進めるべきか整理しにくい。

買収価格や条件をどう考えればよいか整理したい
売り手の希望価格は提示されているが、自社としてどこまで支払うのか、どの条件を求めるのか検討したい。

経営者自身の負担が大きい
本業を経営しながら、案件探索、資料確認、面談、専門家との調整、条件交渉への対応まで進める必要がある。

複数の専門家を連携させながら案件を進めたい
税理士、弁護士、公認会計士、金融機関などから得られた情報を、案件全体の検討につなげながら進めたい。

特に中小・中堅企業では、専任のM&A担当者を置くほど買収件数は多くない一方、一件の買収が会社全体へ与える影響は大きくなります。

そのため、自社だけで対応する部分と外部の支援を利用する部分を整理し、必要な支援体制をつくることが重要です。

具体的な案件がある場合、相談前に整理しておきたいこと

すでにM&A仲介会社などから案件を紹介されている場合、相談前にすべてを分析しておく必要はありません。

次のような情報があると、相談を進めやすくなります。

  • なぜその会社に興味を持ったのか
  • ノンネームシートや企業概要書など、現在受け取っている資料
  • 提示されている希望譲渡価格
  • 仲介会社や売り手と、どこまで話が進んでいるか
  • 現時点で疑問に感じている点
  • 今後どこまで検討を進めるか迷っている点

何を確認すればよいのか分からない段階そのものが、相談テーマになることもあります。

まだ具体的な案件がない場合、相談前に整理しておきたいこと

まだ具体的な案件がない場合、買収条件を最初から細かく決めすぎる必要はありません。

ただし、どのような会社を探すのかを考えるために、次のような点は大まかに整理しておくとよいでしょう。

  • なぜ会社を買いたいのか
  • 買収によって何を実現したいのか
  • どのような業種・事業を考えているのか
  • 地域に希望があるか
  • どの程度の企業規模を想定しているか
  • どの程度の投資額を想定しているか
  • 買収後、誰が経営するのか

これらを最初から完璧に決める必要はありません。

例えば「人材を獲得したい」という目的で会社買収を考えていても、対象とする企業規模や地域は、候補企業を見ながら調整することもあります。

重要なのは、条件を細かく固定することではなく、候補企業を見るための判断軸を持つことです。

まとめ|「誰に相談するか」より「何を相談したいか」を整理する

会社を買いたいと思ったとき、最初に「どこへ相談すればよいか」を考えがちです。

しかし、その前に「自社は今、何について困っているのか」を整理すると、必要な相談先が見えやすくなります。

税務について確認したいのであれば税理士、買収資金なら銀行・金融機関、契約や法務リスクであれば弁護士が重要な相談先になります。

買収候補企業を探すのであれば、M&A仲介会社、金融機関、M&Aプラットフォーム、買い手FAなど複数の方法があります。

さらに、買収方針をもとに候補企業を探し、紹介された案件を自社としてどう評価するか、価格や取引条件をどう考えるか、専門家から得られた情報を案件全体の検討へどうつなげるかという買い手側の支援では、買い手FAを相談先の一つとして考えることができます。

どこか一つの相談先ですべてを解決しようとするのではなく、必要な役割を組み合わせて支援体制をつくることが重要です。

そのうえで、社内にM&A経験者がいないのであれば、候補企業の探索から案件評価、各専門家との調整まで、買い手側で誰が全体を整理するのかも考えておくことが重要です。

会社買収について、誰に相談すべきか迷っている経営者の方へ

「会社を買いたいが、どのような会社を探せばよいか分からない」「買収候補企業を探したい」「仲介会社から案件を紹介されたが、自社側で相談できる人がいない」という段階からご相談いただけます。

弊社では、専任のM&A担当者を置いていない中小・中堅企業を中心に、買い手企業の立場から会社買収を支援しています。

まだ具体的な案件がない場合は、買収目的や対象条件を整理し、買収候補企業を探すところから支援します。

具体的な案件がある場合は、現在の検討状況や資料をもとに確認すべき事項やリスクを整理し、買収判断に必要な検討をサポートします。

※本記事は一般的なM&Aの相談先と役割を解説しています。実際の案件では、案件の内容に応じて税理士、弁護士、公認会計士、金融機関など各分野の専門家と連携しながら検討を進めます。

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この記事を書いた人

株式会社スプリングフィーリング代表取締役。中小企業の会社買収を中心に、買い手FAとして案件検討・条件交渉・デューデリジェンス・PMIを支援。本サイトでは、買収を検討する経営者向けにM&A実務情報を発信しています。

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