初めて会社を買収する経営者の方へ
会社を買収することは、新しい顧客、人材、技術、事業基盤などを短期間で獲得できる成長手段の一つです。
一方で、M&Aを検討し始めると、
「どのような会社を買えばよいのか」
「いくらまでなら投資してよいのか」
「仲介会社から紹介された案件をどう判断すればよいのか」
「買収後、本当に経営できるのか」
など、多くの疑問が出てきます。
特に初めて企業買収を行う場合、最初から個別案件を探し始めてしまうと、案件ごとに判断基準が変わりやすくなります。
M&Aで最初に行うべきことは、案件探しではありません。
自社がなぜ会社を買うのか、どのような会社なら買うのか、その基準を決めることです。
M&A意思決定ノートでは、専任のM&A担当者を持たない中小・中堅企業の経営者に向けて、会社買収を検討する際に必要となる考え方や実務情報を提供しています。
まず「案件探し」から始めない
M&A仲介会社やM&Aプラットフォームを利用すると、多くの売却案件を見ることができます。
しかし、買収方針が決まっていない状態で案件を見始めると、
「利益が出ているから良さそう」
「価格が手頃だから検討しよう」
「成長業界だから買ってみたい」
といった、案件側の情報に判断を引っ張られやすくなります。
重要なのは、
この会社が良い会社か
ではなく、
この会社が自社にとって買うべき会社か
という視点です。
そのため、案件情報を見る前に、自社の買収目的や投資基準を整理しておくことが重要です。
会社買収を始める前に決める7つのこと
01 なぜ会社を買収するのか
最初に整理したいのが、M&Aの目的です。
例えば、
- 新しい顧客を獲得したい
- 人材や技術者を確保したい
- 新しい地域へ進出したい
- 新規事業へ参入したい
- 商品・サービスを増やしたい
- 許認可や事業基盤を取得したい
- 既存事業とのシナジーを生みたい
など、目的によって買うべき企業は変わります。
「売上を増やしたい」というだけでは条件が広すぎます。
買収によって何を手に入れたいのかまで具体化することが重要です。
02 どのような会社を買うのか
次に、買収対象企業の条件を決めます。
業種だけでなく、
売上規模、利益規模、従業員数、地域、顧客属性、事業内容、経営者への依存度なども検討します。
条件を細かく決めすぎる必要はありません。
ただし、
「これだけは満たしてほしい条件」
と、
「この条件なら原則として買わない」
を決めておくと、案件を判断しやすくなります。
03 いくらまで投資できるのか
買収価格だけを考えるのではなく、M&Aに必要となる資金全体を考えます。
企業買収では、株式や事業の取得代金以外にも、
デューデリジェンス費用、専門家費用、各種手続費用、買収後の運転資金や追加投資などが発生する場合があります。
また、自己資金だけでなく、金融機関からの借入を利用するケースもあります。
「最大いくらまで買えるか」ではなく、
いくらまでなら買収後も無理なく経営できるか
という視点で予算を考えることが重要です。
04 買収後に誰が経営するのか
初めてのM&Aで見落とされやすいのが、買収後の経営体制です。
例えば、
売り手経営者に一定期間残ってもらうのか、自社の役員を派遣するのか、現場の責任者に経営を任せるのかによって、買える会社の条件も変わります。
特に売り手経営者への依存度が高い会社では、
売り手経営者が退任した後も事業が継続できるか
を慎重に考える必要があります。
05 どこから案件を探すのか
買収案件を探す方法は一つではありません。
M&A仲介会社、FA、M&Aプラットフォーム、金融機関、士業、取引先など、さまざまなルートがあります。
一つの仲介会社だけに依存するのではなく、複数の情報ルートを持つことで、自社の方針に合った案件に出会える可能性が高くなります。
ただし、重要なのは案件数ではありません。
自社の買収方針に合った案件を効率よく見つけること
が目的です。
06 案件をどの基準で見送るのか
M&Aでは「買う基準」と同じくらい、「見送る基準」が重要です。
例えば、
特定の顧客への依存度が高い、経営者が退任すると事業が回らない、重要な従業員が退職する可能性が高い、買収価格に対して期待できる利益が小さい、といった場合です。
良い案件を探すこと以上に、
自社に合わない案件を早い段階で見送る
ことが、M&Aを効率的に進めるうえで重要になります。
07 買収後に何を実現したいのか
買収はゴールではありません。
会社を取得した後に、
売上を伸ばすのか、利益率を改善するのか、新しい顧客へ販売するのか、人材を活用するのか、既存事業と統合するのか。
買収前から、ある程度の仮説を持っておく必要があります。
「この会社を買ったら何をするか」が思い浮かばない案件は、慎重に検討した方がよい
というのが一つの判断基準になります。
会社を買収するまでの流れ
買収方針が決まった後は、一般的に次のような流れで進みます。
買収方針の整理 → 案件探索 → 初期検討 → 売り手経営者との面談 → 意向表明 → デューデリジェンス → 条件交渉 → 最終契約 → クロージング → PMI
案件によって順序や内容は異なりますが、大きな流れはこのようになります。
初めてM&Aを行う企業では、一つひとつの手続きを完璧に理解することよりも、
現在どの段階にいて、次に何を判断しなければならないか
を把握することが重要です。
M&A仲介会社と買い手FAの違い
M&Aを検討すると、仲介会社とFAという言葉を目にすることがあります。
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に入り、取引成立に向けて調整を行います。
一方、FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、基本的に売り手または買い手のどちらか一方の立場から支援します。
買い手FAは、買い手企業側の立場から、案件検討や交渉、M&Aプロセス全体を支援する役割です。
特に、「仲介会社から案件は紹介されるが、自社としてどう判断すればよいか分からない」という企業では、買い手側に立つ支援者を置く意味があります。
案件を見るときは、売上と利益だけで判断しない
案件資料を見ると、最初に目に入るのは売上、営業利益、希望譲渡価格などです。
もちろん重要な数字ですが、会社の価値は財務諸表だけでは判断できません。
特にIT・人材・BtoBサービスなどでは、
顧客基盤、継続契約、人材、ノウハウ、Web集客力、キーマンへの依存度などが事業価値を大きく左右します。
例えば、利益が安定している会社でも、その売上の大半を特定の顧客1社に依存している場合には、買収後のリスクが大きくなる可能性があります。
数字だけでなく、
その利益が今後も継続する仕組みになっているか
を見ることが重要です。
買収価格は「安い・高い」だけで判断しない
同じ利益を出している会社でも、その価値は同じとは限りません。
事業の成長性、顧客構成、経営者への依存度、人材の定着、競争力、買収後のシナジーなどによって、買い手にとっての価値は変わります。
また、企業価値評価によって算出された金額が、そのまま「買うべき価格」になるわけでもありません。
重要なのは、
自社がその価格を支払って、買収後に十分な投資効果を得られるか
という視点です。
デューデリジェンスは専門家と進める
意向表明などを経て本格的な買収検討に進むと、デューデリジェンスを行います。
財務・税務・法務など専門性の高い調査については、公認会計士、税理士、弁護士などの専門家へ依頼することが一般的です。
重要なのは、専門家へ調査を依頼するだけではありません。
専門家から指摘された事項について、
その問題が買収判断や価格、契約条件、買収後の経営にどのような影響を与えるのか
を買い手経営者自身が理解することです。
買収後の経営まで考えて案件を選ぶ
企業買収では、契約締結やクロージングが大きなイベントに見えます。
しかし、買い手企業にとって本当のスタートは買収後です。
売り手経営者からの引継ぎ、従業員への説明、重要取引先との関係維持、管理体制の整備などを進める必要があります。
そのため、案件を検討する段階から、
この会社を買収した後、自社はどのように経営するのか
を考えておくことが重要です。
買う案件だけでなく、見送る案件を決める
会社買収では、良い案件を見つけることに意識が向きがちです。
しかし、実務では多くの案件を見送りながら、自社に合う企業を探していくことになります。
M&Aを成功させるためには、
買う決断と同じくらい、買わない決断が重要です。
M&A意思決定ノートでは、案件紹介そのものではなく、買い手経営者が「買う・見送る」を判断するための情報を提供していきます。
専任のM&A担当者がいない企業を支援します
株式会社スプリングフィーリングでは、専任のM&A担当者を持たない中小・中堅企業に対し、買い手企業の立場から企業買収を支援しています。
買収方針の整理から、案件探索・初期検討、トップ面談、意向表明、専門家によるデューデリジェンス、条件交渉、契約・クロージング、買収後の初期PMIまで、一貫して支援します。
当社が重視しているのは、M&Aを成立させることだけではありません。
十分な投資効果が見込めない場合や、買収後の経営リスクが大きい場合には、案件を見送ることも含めて助言します。
会社買収について、現在の状況をお聞かせください
買収方針がまだ決まっていない段階でも、すでに具体的な案件を検討している段階でもご相談いただけます。